ハロー、かみさま。 / 誰がためにこの雨は。     .....06/02

   

私は余裕綽々で

君に笑顔を向けていればいい

大丈夫だよ、泣いたりしないよ

私はお姉さんだし、ね、そうでしょ?

 

例えばこんなに寂しい夜があることを私はずっと忘れていた。

例えば当たり前が当たり前でなくなる日が来ることを考えもしなかった。

例えばこんなに悲しい痛みがあることを私は全然知らなかった。

もう一度、信じてみたかった。でも、信じてみないほうが、良かった?

 

空は久しぶりに晴れて。

暑いほどの眩しい日差し。

もうすぐ夏が来る。二回目の夏。

だけど楽しかった思い出も、今の私には凶器でしかない。

そして青空は追いやられて。

また降り続く、憂鬱な雨、雨、雨。

 

ああ、数日のうちに私の知らないところで世界は大きく変わっていて、

私はそんな生まれたてのクリアな世界の中で赤ん坊のように泣いている。

全てに恐怖し、全てに歓喜し、全てを憎み、そして全てを愛して。

 

日々は不安と恐怖の連続で

ゆっくりと優しく首を絞められているみたい

新しい世界をなかなか受け入れられない私は

まだまだ上手に笑えない

 

笑えない私に気付いた君が向けた笑顔

それを見て私はとても死にたくなる

それは優しすぎて悲しすぎて

無数の針で刺されるような

本当は私も笑顔で大丈夫だよって、ありがとうって返したいけど

ごめんね、私はまだまだ子供で

その全てを独占できないことが悔しくて笑顔が壊れるんだ

ねぇ、本当に子供じみた、くだらない我が儘でしょう?

 

もうメールの履歴も昔の手帳も貰った手紙も見ないことにした

辛いだけだし、弱い私にどんどん負けるだけ。

 

でも辛いのはきっと私だけじゃなくて

君もあの子もそうだって解ってる

だから私はあえて言わない

言った所で二人を苦しめるだけで

私自身救われるわけでもないから

ね、だから君は知らなくていい

私のココロを知っているのは無口な蜥蜴だけでいい

 

あの日私は人知れず死んで、色も笑顔も失ったけど

私の中にいる蜥蜴は無色の声で叫び続けている

時々崩れそうになるけど

ああ、負けちゃいられない

 

ねぇ、だから、私は余裕綽々で

見て見ぬ振りして笑っていれば良いんだわ

泣かないし意地悪もしないし怒りもしないわ

きっとうまくやってみせるから、気にしないで笑っていてよ

だって私はお姉さんだし、ね、そうでしょ?

 

ああ、かみさま、もしもいるのなら

こんな醜い私をどうか、

気が狂う前に私を、どうか―――。